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トビウオ、グライダー、地中海の怪物、クサヤ、対艦ミサイル [雑学]

今住んでいるK市の空港は、沖合の埋め立て島にあり、空港バスは対岸から空港用の橋を通っていく。
先日東京に出張した際、何気なくバスから海を見ていると、魚がはねた。かなり遠くからハッキリ見えたので相当に大きな魚だろう。ことによるとイルカの類いかもしれない。

トビウオ
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はねる魚と言えば、トビウオである。はねると言うより滑空、飛行すると言ったほうが良いかもしれない。私は以前ウィンドサーフィン中に突然足元からトビウオが飛び出し、ボードを追い越して海面すれすれを延々と飛翔するのを見たことがある。その時は私もフルプレーニング中であったので、相当なスピードだったと思われるのだが、少なくとも十数秒、距離にして100mくらいは(時々水面をはたくように見えた)滑空していた。(調べてみると1回につき300mくらい滑空するらしい。記録された最長の飛翔時間は45秒というのがある。)イルカのジャンプのようにピョンとはねるのをイメージしていた私は、あまりに華麗な飛行ぶりに脱帽したものである。
トビウオが空中に飛び出すのは他の捕食者から逃れるためらしいが、水中の世界しか知らない捕食者から見れば、一瞬にして異次元空間へ消えたように思えるだろう。

地面効果と翼端渦流
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トビウオがあんなにも華麗に飛翔するのは、地面効果のおかげである。
飛行機の主翼には翼端に発生する翼端渦流(wingtip vortex)という渦を巻いたような空気の流れがあり、この渦流が1周まわって主翼を上から押さえつけるような作用を及ぼし、揚力の抵抗となってしまう。(この翼端渦流を抑制するために、旅客機の翼端にはウイングレットと呼ばれる小翼が備えつけられていたりする。)
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ウイングレットの一例。このような小改造だけで燃費が向上するらしい。
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ラジコングライダーにも滞空性能を重視したものの中にはウィングレットが付いているものがある。

地面効果とは、地面や水面すれすれを飛行すると、この翼端渦流が地面で遮られるため、翼の上面に回り込めず、従って効率的な揚力を維持出来る・・・ということのようである。翼幅の半分より高度が低い状態で効果が表れるそうで、ラジコンでもアスペクト比の大きなF3Bグライダーを飛ばしていると実感出来る。
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着陸のため高度を下げてきても、地面近くでなかなか降りてこなくなりオーバーラン、ということになる。このため模型グライダーでもフラップやエアブレーキといった揚力調整装置を使いこなさないと定点に着陸させるのは難しい。

トビウオが航空力学を理解しているかどうか不明だが、飛行に適化したその体は流麗で美しい。

カスピ海の怪物
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地面効果を利用した乗り物がある。地面効果翼機と呼ばれるもので、冷戦下の旧ソ連で極秘に研究開発されていた。海上で離水し、地面効果を利用しながら水面すれすれを高速移動するものである。ソ連ではエクラノプランと呼ばれていたが、航空機とも船舶とも飛行艇とも異なる、その非常に奇異な形状を偵察衛星で確認した西側は、「カスピ海の怪物」と呼んだそうである。

EXOCET
地面効果とはあまり関係ないが、フォークランド紛争で有名になった対艦ミサイルのEXOCET(エグゾセ)はフランス語でトビウオのことである。「電波高度計により飛行高度を3mまで下げて海面上を這うようにして目標に接近する、”シー・スキミング(超低空海面追随飛行)”が可能な、”シー・スキマー”タイプの対艦ミサイル」とのことで、妥当なネーミングといえるだろう。

クサヤ
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トビウオは九州近海で良く取れ、旬は初夏〜夏、地元では「アゴ」の別名で親しまれている。「アゴだし」と称してだしをとったり、竹輪など練り物のイメージが強いが刺身も美味しく、トビウオの卵はトビッコと呼ばれ、回転すしでも良く見かける。新島や八丈島では「クサヤ」に加工されるそうだ。
「クサヤ」はまだ食べたことは無いのだが、その強烈な臭いで有名だ。臭さの測定単位にアラバスター単位(Au)というものがあり、クサヤは1267Auだそうだ。日本ではダントツ1位の臭さであるが、諸外国にはまだ上があり、スウェーデンのシュールストレミングというニシンの缶詰は何と8070Au!文句なしの世界ナンバーワンである。通常の缶詰と違い、発酵中のものを殺菌せずに缶詰してしまうため、発酵が続いており、「缶詰が膨らんだくらいが食べ頃」ならしい。開封する際に缶内で発生したガスによって汁が勢いよく飛び出すので、屋外(噴出を抑えるため水中も含む)で開けることが推奨されている(笑)こんなものを食べたがる人がいるのが不思議であるが、日本に輸入もされているらしい。ただし、航空機内では缶詰が破裂して周囲に臭気が飛び散るおそれがあるため持ち込みが禁止されており、日本に輸入するには船便で運ぶしかないそうだ。
・・・臭気指数(Au)だが、食品業用に測定する器具が国内でも販売されている。(ただし測定上限が2000Auまで。)

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